僕が2011年51本目に観た映画です。
この物語は原作(続編を含む)からのファンで、公開をとても楽しみにしていました。
誤解を恐れずに言えば、この物語は、世の中を元気に生きている前向きな人達、成功者の方々には全く響かないかもしれません。
そういう意味では、TwitterやFacebook等のSNSを有効的に、そして前向きに利用される方々にも響かないかもしれません。
別にこのような方々が心を持たない冷徹な人と言っている訳ではありません。
むしろ、こういった方々ほど豊かな感性を持ち、人それぞれに心に響く場所や人との接点を持ち、人生に潤いを得ながら充実した日々を過ごされていると思います。
対して、この作品の主人公のお父さんは、典型的な弱者であり、最期まで報われることはありません。
ですが、その負け犬人生も、報われないゴールも、全てはお父さん自身の選択が招いた結果であり、これは勝ち組の人達からすると、「自業自得」にしか映らず、そんな人と犬が死んだからと言って、恐らくは共感してもらえない物語だと思えるからです。
僕は…偽ってもしょうがないので告白すれば、弱者です。
あ…別に同情してくれと言っている訳ではありません。(笑)
物語のお父さんのように家庭を持ち、犬も飼い、お父さんほどではありませんが、それなりの年齢に達しています。
お父さんのように、別に悪いことをした訳ではない…いやむしろ真面目に働いてきた人が突然のリストラ、熟年離婚、高齢からくる病気、孤独死と、今の世の中では決して珍しい話ではありませんが、人より少しだけ不器用にしか生きられなかった人…幸い、僕は今は切れ目なく仕事を頂いてますが、一時期は仕事が途切れたこともあり、近い立場に立たされたこともあるだけに、非常に考えさせられます。
なので…この作品は原作も、映画も…多くを考えさせられ、それでも(死に直面するまで)弱音を吐かず陽転思考するお父さんに泣いてしまうのです。
この物語は、決して「同情を買うためだけ」に生まれた訳ではありません。
原作や映画に接した方は分かると思いますが、「人との繋がりを大切に」、「見返りを期待しない施しは、人生を豊かにする」、そして「こんな自分でも、こんな境遇でも、他人と比べるな。人は人、自分は自分。もう少し頑張ってみよう」と、前向きな気持ちになれる物語だと思うのです。
ということで…映画も原作の雰囲気をよく伝えており、心に染みる素敵な作品に仕上がっていました。

ところで、この物語は映画の部分だけでは完結しません。
原作では続編があり、そちらで、お金を盗んで消えてしまった少年と、ハッピーの兄弟犬の物語が語られています。
そして、この続編の話が映画で描かれた部分を見事に補完してくれており、そこまで読んで始めて物語が完結しています。
ですので、映画から入った方で映画が気に入ったのならば、是非、原作の続編にも触れられる事をお勧めします。
本作だけ観て、後味が悪いとか感じた人も、お父さんとハッピーが、関わった人達の今後の人生に多くのモノを残し、そして自身も、最期はお互いや全ての人に感謝して、幸せだったのだろうと思えるのではと思います。